○Episode1 : 今の生き方を選んだ理由…

ある日、Pさんが「私の1番幸福だった過去世を知りたい!」と言って私のところにやって来ました。
ああ、それは楽しそう!
私は、早速Pさんを『1番幸福だった過去世』に誘導しました。
Pさんは催眠に入りやすいので、誘導はとても楽です。
この日も、Pさんはあっさりと催眠状態に入りました。

Pさんの潜在意識が選んだ過去世は、大きな柱のある風景から始まりました。
前世の彼女は天蓋(てんがい)付きの大きく豪華なベッドに寝ていて、今目覚めたばかり。
果物などが盛られた朝食のお盆が、女性の手でベッドまで運ばれてきます。
色々と観察をしていく内に、それは大きな建物の部屋の1つで、しかもとある王朝の後宮だと判明しました。
彼女は王様の側室の1人だったのです。

Pさんの過去世である彼女は、自分の生活をそれはそれは幸せそうに語ります。
『私はね、とても貧乏な村に生まれたの。その村では一番の美人って言われたし、周りの人にも良くしてもらったわ。でも、私はあんな村で退屈に過ごすのは真っ平だったの』
『だって、私のおばあさんの顔のしわしわで恐ろしかったこと!その上、本当に無知なのよ。』
『あの村で暮らしていたら、私もいずれは年を取ってあのおばあさんのようになってしまうに違いないわ。そう思うと、怖くて辛くてとても嫌だった。貧乏な暮らしは真っ平だと思っていたの』
『そんな時、私は後宮に連れて来られたの。両親や親戚、村の人は、私がいなくなるのを悲しがったわ。でも、私は悲しくなんかなかった。だって、お城で暮らせるのよ!夢のようだと思ったわ!』
『お城に連れて行かれる日、乗り物の中で「私は勝ったのよ!」ってずっと思っていたの』
『だけど、来てみたら後宮にはたくさんの美しい女性がいて……私は王様の顔を見たことも無いの。最初の日に遠くで姿を見ただけなの。』
『それでも、私はきれいな服を着て豪華な部屋に住めるようになったの。そして、それより何よりね、凄く嬉しいのは、字が読めるようになったのよ!』
そう語る彼女の表情は、とても生き生きとして、本当に嬉しそうです。
『私は、色々な本が読めるの!ここから出る事はできないけど、本を通して、時間も距離も飛び越えて、色々な事を知ることができるのよ!』

その後、彼女は王様に呼ばれる事は生涯ありませんでしたが、後宮で好きな研究をして暮らしました。
村にいた頃は文字も読めなかった彼女が、持ち前の研究心で世界の様々な本を読みこなします。
そして、その研究の成果をまとめては書物にしていました。
その学問の高さを認められ、王子の教育係も勤めました。
その時の彼女は、本当に生き生きと充実した人生を送っている感じがしました。

その幸せな生活は戦争によって絶たれますが、前世の彼女は思い切り人生を生きてきたから良いのだ、と言い切ります。
戦争は辛く悲しい出来事だけれど、私の人生には悔いは無いの、と。
『悔いがあるとしたらたった1つ、私の研究の成果の書物が、戦争で燃えてしまって残っていないという事ね。あなたたち(Pさんとセラピスト・高橋)にも見せたかったわ……』

この前世を見て、Pさんはなぜ自分が本が好きで物事を突き詰めて考えるのが好きなのかが理解できたそうです。
「あれだけ楽しそうに研究をしていたんですもの、私が研究好きなわけですね」
そんな風に話すPさんの職業は、研究者です。
ただし、現在のPさんは、前世の彼女とは違い、研究だけではなく結婚もしているし、友人もたくさんいます。
前世の彼女の事は、
「彼女は何にも煩わされず、生活の殆どを勉強や研究だけに使えて、本当に幸せな気持ちだった。恋愛を経験せずに戦争に巻き込まれて死んだけれど、でもそれは彼女にとって大した問題ではなかったみたい」
と感じたそうですが、愛情面や対人面を充実させるあたり、前世の彼女は、本心ではもっとプライベートでも満たされたかったのかもしれませんね。